負けると大泣き。勝ち負けを受け入れられない子への対応
ゲームやかけっこで負けるとお子さまが激しく泣いて暴れてしまい、勝つまでやり直しを要求して、やり直させないと癇癪がひどくなって手がつけられなくなり、結局勝たせてしまうという悪循環になっているというご相談をいただくことがあります。トランプやボードゲームで負けそうになるとルールを勝手に変えたりズルをしたりして、それを注意すると怒って泣いてゲームをひっくり返してしまい、家族みんなでゲームを楽しむことができず、友達ともゲームで遊べないため孤立してしまって困っている、、、という保護者の方がとても多くいらっしゃいます。
運動会のかけっこで1位になれなかった時に大泣きして参加できなくなる、じゃんけんで負けただけで泣く、なぜ負けることがこんなに許せないのか分からず、小学校に入ってからも続くのではないかという不安も大きいというお気持ち、本当によく分かります。
負けると大泣き、勝ち負けを受け入れられないという状況は、発達障害のお子さまに非常に多く見られる困難ですが、適切な対応と段階的な練習によって少しずつ負けを受け入れられるようになっていきますので、焦らずに進めていくことが大切です。
負けを受け入れられない理由
完璧主義
発達障害のお子さまには完璧主義が多く見られ、1番でなければダメ、負けることは失敗だという思い込みが強いため、負けることが自分を全否定されたように感じてしまい、耐えられません。
感情のコントロールができない
負けた時の悔しさや悲しさという強い感情をコントロールする力がまだ育っておらず、感情に圧倒されてパニックになり、泣いたり暴れたりしてしまいます。
負けの経験が少ない
家で保護者が勝たせてあげることが多く、負ける経験が少ないため、負けることに慣れておらず、負けた時にどう対処すればいいか分からず、パニックになります。
結果しか見えない
過程を楽しむということができず、勝ったか負けたかという結果しか見えないため、頑張ったこと、楽しかったことは関係なく、負けた=ダメという二極思考になっています。
自己評価が低い
自己評価が低く、勝つことで自分の価値を確認しているため、負けることは自分に価値がないと感じることになり、負けることが自己否定につながってしまいます。
柔軟性の欠如
予想と違う結果を受け入れる柔軟性が欠けており、自分が勝つという予想通りにならないことが許せず、予想外の展開に対応できません。
他者と比較する
友達と自分を常に比較しており、負ける=友達より劣っているという認識になるため、比較されることへの不安が強く、負けることが怖いのです。
ルールの理解が不十分
ゲームには勝ち負けがある、勝ったり負けたりするのが普通だということが理解できておらず、負けるというルール自体が受け入れられません。
家庭でできる負けを受け入れる工夫
勝ち負けのないゲームから始める
最初は勝ち負けがない協力型ゲームから始めることで、みんなで協力してゴールを目指すゲーム、勝敗がないパズルや制作活動など、勝ち負けを気にせず楽しめる活動から始めます。
運の要素が強いゲームを選ぶ
実力よりも運の要素が強いゲームを選ぶことで、サイコロゲーム、カードの運で決まるゲームなど、負けても実力がないからではないと理解しやすく、受け入れやすくなります。
保護者がわざと負ける姿を見せる
保護者が負けた時に、残念だったけど楽しかったねと笑顔で言う姿を見せることで、負けても大丈夫なんだというモデルを示し、負けることは恥ずかしいことではないと学びます。
過程を褒める
結果ではなく過程を褒めることで、頑張ったね、最後まで諦めなかったね、楽しそうに遊んでたねと、勝ち負けに関係なく認めることで、結果だけが重要ではないと学びます。
負けた時の言葉を教える
負けた時に何と言えばいいか具体的に教えることで、残念だったけど楽しかった、次は頑張る、おめでとうという言葉を教え、負けを受け入れる言葉を身につけます。
小さな勝ちを積み重ねる
全く勝てないと自信を失うため、時々は勝たせてあげることで、勝つ喜びと負ける経験の両方をバランスよく経験させ、勝ったり負けたりが普通だと理解させます。
ゲームの回数を増やす
1回のゲームで終わらず、3回やって2勝1敗ならあなたの勝ちねというように回数を増やすことで、1回負けても次がある、トータルで見るという視点を育てます。
負けても良いことがあると教える
負けた人が先にデザートを選べる、負けた人が次のゲームを選べるなど、負けても良いことがあると示すことで、負けることが完全な損失ではないと理解できます。
ルールを事前に確認する
ゲームの前に、このゲームには勝ち負けがあるよ、負けることもあるよと事前に伝えることで、心の準備ができると受け入れやすくなり、突然負けるより覚悟ができます。
クールダウンの時間を作る
負けて泣いてしまった時は、無理に止めずに少し泣かせてあげることで、感情を発散させた後に、残念だったね、でも頑張ったねと声をかけ、気持ちを受け止めます。
勝ち負けの意味を教える
勝ち負けは強い弱いではなく、運やタイミングであることを教えることで、負けた=ダメな人間ではない、今日は負けたけど明日は勝つかもしれないと理解を促します。
ソーシャルストーリーで学ぶ
負けることについてストーリー形式で教えることで、ゲームには勝ち負けがあります、負けても楽しかったねと言えます、次は頑張ろうと思えますというストーリーで理解を深めます。
他の人の負け方を観察する
スポーツ中継やゲーム動画で、負けた人がどう振る舞っているか見せることで、握手をする、おめでとうと言う、笑顔で退場するという姿を見せ、こういう風にするんだねと学びます。
少しずつ負ける経験を増やす
最初は10回に1回負ける、次は5回に1回、3回に1回と、段階的に負ける経験を増やすことで、急に負けが増えると受け入れられないため、徐々に慣れさせます。
負けた後の楽しみを用意する
ゲームが終わったら好きなおやつ、終わったら公園に行くなど、ゲームの後に楽しいことを用意することで、負けてもその後に良いことがあるという流れを作ります。
勝敗以外の目標を設定する
最後まで諦めない、ルールを守る、楽しむという勝敗以外の目標を設定することで、負けても目標が達成できたね、すごいと褒めることができ、勝ち負けだけが評価基準ではなくなります。
感情を受け止める
負けて悔しいという気持ちを否定せず、悔しいよね、残念だったねと受け止めることで、感情を受け止めてもらえると、少しずつ落ち着けるようになり、次に進めます。
家族みんなで楽しむ
勝敗よりも家族で楽しく過ごすことを優先し、笑い合ったり会話したりすることに焦点を当てることで、ゲームは楽しむものという本来の目的を理解できます。
自分との勝負にする
他人との比較ではなく、前回の自分より成長したか、自己ベストを更新できたかという視点を教えることで、他人と比べるのではなく、自分の成長に焦点を当てる習慣をつけます。
無理強いしない
どうしても受け入れられない日は無理強いせず、今日はやめておこう、また今度ねという柔軟な対応をすることで、無理にやらせると余計に嫌いになるため、できる時にやることが大切です。
専門家に相談するタイミング
日常生活に支障が出ている時
負けることへの恐怖で何もできない、ゲームだけでなく全ての活動で1番でないと気が済まないという状態が日常生活に支障を来している場合は、専門的な支援が必要です。
パニックが激しい時
負けると激しくパニックになり、自傷や他害、物を壊すなどの行動が見られる場合は、早急な対応が必要です。
完璧主義が強すぎる時
負けだけでなく、少しのミスも許せない、完璧でないと許せないという完璧主義が非常に強く、日常生活全般で苦しんでいる場合は、認知行動療法などの専門的な支援が有効です。
友達関係が全くない時
負けられないために友達と遊べず、完全に孤立してしまっている場合は、ソーシャルスキルトレーニングなどの支援が必要です。
負けを受け入れられる日は必ず来る
負けると大泣き、勝ち負けを受け入れられないというお悩み、毎回泣かれて疲れてしまうお気持ち、よく分かります。
でも、知っておいていただきたいのは、負けを受け入れられる日は必ず来るということです。今は全く受け入れられなくても、段階的な経験と適切なサポートによって、少しずつ負けても大丈夫だと思えるようになっていきます。
大切なのは、勝ち負けのないゲームから始めること、保護者が負ける姿を見せること、過程を褒めること、負けた時の言葉を教えること、ゲームの回数を増やすこと、感情を受け止めること、家族みんなで楽しむこと、無理強いしないことです。そして何より、お子さまの気持ちに寄り添うこと、焦らないことです。
負けを受け入れられるようになると、友達とゲームで遊べるようになる、スポーツや競技に参加できるようになる、失敗を恐れず挑戦できるようになる、柔軟性が育ち、人生を楽しめるようになります。
焦らないでください。少しずつ、負けを受け入れる力を育てていきましょう。今日は泣かずに負けられた、明日はおめでとうと言えた、来週は笑顔で負けられた。必ず進歩します。その可能性を信じて、今日から工夫を始めてみましょう。
勝ち負けは人生の一部です。勝つ喜びも負ける悔しさも、どちらも大切な経験です。お子さまのペースを尊重しながら、温かく見守りながら、一緒に負けを受け入れる力を育てていきましょう。