友達を叩いてしまう。手が出る子、どう止める?
お子さまが幼稚園や公園で友達を叩いてしまい、おもちゃの取り合いになると叩く、順番を抜かされると押す、気に入らないことがあるとすぐに手が出てしまうため、毎日のように先生から報告を受けたり他の保護者から苦情を言われたりして、謝ってばかりで疲れ果ててしまうというご相談を、よくいただきます。何度叩いてはダメだと教えても繰り返してしまい、保護者が見ている前でも平気で叩いてしまうため、友達が離れていき孤立してしまい、このまま友達ができないのではないかと心配しているという保護者の方が、とても多くいらっしゃいます。
言葉で伝えればいいのに手が先に出てしまう、叩いた後に謝ることもできない、なぜ手が出てしまうのか分からず、小学校に入ってからも続くのではないかという不安も大きいというお気持ち、本当によく分かります。
友達を叩いてしまう、手が出る子という状況は、発達障害のお子さまに非常に多く見られる困難ですが、適切な対応と代替行動の練習によって少しずつ改善していきますので、焦らずに段階的に進めていくことが大切です。
手が出てしまう理由
言葉で表現できない
気持ちを言葉で表現する力がまだ育っていないため、嫌だ、やめて、貸してという言葉が出てこず、手が先に出てしまい、叩くことでしか自分の気持ちを伝えられません。
衝動性が強い
ADHDの特性として衝動性が強く、カッとなったら考える前に手が出てしまうため、叩いたらどうなるか、相手がどう思うかを考える前に、体が勝手に動いてしまいます。
感情のコントロールができない
怒りや悔しさなどの感情をコントロールする力がまだ育っておらず、強い感情を感じると抑えられなくなり、叩くという行動で感情を発散させてしまいます。
相手の気持ちが理解できない
叩かれたら痛い、悲しい、怖いという相手の気持ちが想像できないため、自分の行動が相手にどんな影響を与えるか分からず、叩くことの重大さが理解できていません。
過去に成功した経験がある
以前叩いたらおもちゃが手に入った、嫌なことをやめてもらえたという成功体験があるため、叩けば問題が解決すると学習してしまっており、有効な手段だと思っています。
ストレスや不安が溜まっている
日常生活でストレスや不安が溜まっており、それを発散する場所や方法が分からないため、友達に対して爆発させてしまい、叩くという形で発散しています。
コミュニケーション方法を知らない
友達とどうやって関わればいいか、おもちゃを貸してもらうにはどう言えばいいか、コミュニケーションの方法を知らないため、知っている方法が叩くことしかなく、それを使ってしまいます。
感覚を求めている
叩くという行動自体が感覚刺激を与えるため、固有感覚を求めて叩いていることもあり、特に興奮している時や不安な時に、感覚を求めて手が出ることがあります。
家庭でできる手が出ることへの対応
感情を言葉で教える
イライラした、怒った、悔しいなど感情を言葉で表現する練習をすることで、叩く前に保護者が感情を代弁してあげる、今怒ってるんだねと言葉にしてあげることで、少しずつ自分で言葉で伝えられるようになります。
代わりの行動を教える
叩く代わりにできることを具体的に教えることで、嫌な時は嫌って言う、怒った時は深呼吸する、イライラしたらクッションを叩くなど、安全な方法で感情を表現する方法を教えます。
ソーシャルストーリーで教える
叩くことについてストーリー形式で教えることで、友達を叩くと痛いです、友達は悲しくなります、叩かずに言葉で伝えましょうというストーリーで、叩くことの影響を理解させます。
ロールプレイで練習する
家でロールプレイをして練習することで、おもちゃを取られたらどうする?貸してって言おうね、嫌な時はどうする?やめてって言おうねと、実際の場面を想定して練習します。
叩く前兆を見逃さない
叩く前には必ず前兆があるため、表情が険しくなる、体が固くなる、声が大きくなるなどの前兆を見逃さず、叩く前に介入して、大丈夫?イライラしてる?と声をかけます。
クールダウンの方法を教える
イライラした時の落ち着き方を教えることで、深呼吸をする、10数える、静かな場所に行く、好きなものを見るなど、具体的なクールダウンの方法を練習します。
成功体験を積む
叩かずに言葉で伝えられた、我慢できたという成功体験を積むことで、手が出そうになったけど止められたね、すごいと認めることで、良い行動が強化されます。
叩いた後の対応を一貫させる
叩いてしまった時の対応を家族で統一することで、すぐにその場から離す、冷静に何がいけなかったか伝える、謝らせるという一貫した対応をすることで、叩いたら良くないことが起こると学習します。
相手の気持ちを教える
叩かれたらどう思う?と聞いて、痛い、悲しい、怖いという気持ちを教えることで、自分が叩かれた経験と結びつけて、相手の気持ちを想像する練習をします。
ストレス発散の時間を作る
日常的にストレスを発散する時間を作ることで、公園で走り回る、トランポリンで跳ぶ、プールで泳ぐなど、体を動かしてエネルギーとストレスを発散させることで、友達への攻撃が減ります。
おもちゃの取り合いを避ける
同じおもちゃを複数用意する、順番を視覚的に示すなど、そもそもトラブルが起きにくい環境を作ることで、取り合いにならなければ叩く機会も減り、成功体験を積めます。
少人数で遊ばせる
大人数ではなく、まずは一人か二人の友達と遊ばせることで、人数が少ないとトラブルも少なく、保護者も見守りやすく、介入しやすくなります。
保護者が近くで見守る
遊んでいる時は保護者が近くで見守り、手が出そうになったらすぐに介入することで、叩く前に止めることができ、叩かずに済んだという成功体験を積めます。
謝り方を教える
叩いてしまった後は謝ることを教えることで、ごめんねと言う、頭を下げるという具体的な行動を教え、謝ることで関係を修復できることを学びます。
良い行動をたくさん褒める
叩かなかった時だけでなく、友達と仲良く遊べた、おもちゃを貸せた、順番を守れたという良い行動を見つけて褒めることで、良い行動が増えると叩く行動は自然と減っていきます。
絵本や動画で学ぶ
友達との関わり方を扱った絵本や動画を見せることで、友達を叩いてはいけない、優しくすることが大切だというメッセージを、楽しく学べます。
感覚グッズを活用する
叩きたい衝動を他の方法で満たすことで、握るボール、叩いていいクッション、引っ張るおもちゃなど、感覚を満たせるグッズを用意することで、友達ではなくグッズで発散できます。
疲れている時は避ける
お子さまが疲れている時、お腹が空いている時、眠い時は手が出やすいため、そういう時は友達と遊ぶのを避ける、短時間にするなど、失敗しやすい状況を避けることで成功率を上げます。
叱りすぎない
叩くたびに強く叱られると、叩くこと自体より叱られることが嫌になり、隠れて叩くようになったり、保護者を避けるようになったりするため、冷静に何がいけなかったか教えることが大切です。
保護者自身が暴力を使わない
保護者が叩いて叱ると、叩くことで問題を解決するというモデルになってしまうため、保護者自身が暴力を使わず、言葉で伝えることの手本を見せることが非常に重要です。
専門家に相談するタイミング
毎日のように手が出る時
毎日のように友達を叩いてしまい、幼稚園や学校で大きな問題になっている場合は、ソーシャルスキルトレーニングなどの専門的な支援が必要です。
怪我をさせてしまう時
叩く、押す、引っ掻くなどで友達に怪我をさせてしまう場合は、早急な対応が必要で、安全を守るためにも専門家の力を借りることが重要です。
言葉の遅れもある時
手が出るだけでなく、言葉の遅れも顕著な場合は、言葉での表現力を育てる支援が必要なため、言語療法士への相談も検討します。
孤立してしまっている時
手が出ることで友達から避けられ、完全に孤立してしまっている場合は、友達関係を作るための支援が必要です。
手が出なくなる日は必ず来る
友達を叩いてしまう、手が出る子というお悩み、、、毎日謝ってばかりで辛いお気持ち、よく分かります。
でも、知っておいていただきたいのは、手が出なくなる日は必ず来るということです。今は叩いてしまっていても、適切な対応と練習によって、少しずつ言葉で伝えられるようになっていきます。
大切なのは、感情を言葉で教えること、代わりの行動を教えること、ソーシャルストーリーやロールプレイで練習すること、叩く前兆を見逃さないこと、成功体験を積むこと、良い行動をたくさん褒めること、保護者自身が暴力を使わないことです。そして何より、お子さまを信じること、焦らないことです。
手が出なくなると、友達ができるようになり、トラブルが減り、幼稚園や学校が楽しくなったり、社会性が育ち、自己肯定感が上がります。
焦らないでください。少しずつ、言葉で伝える力を育てていきましょう。今日は一度も叩かなかった、明日は言葉で伝えられた、来週は友達と仲良く遊べた。必ず進歩します。その可能性を信じて、今日から工夫を始めてみましょう。
手が出ることは、コミュニケーションの未熟さの表れです。お子さまの気持ちに寄り添いながら、温かく見守りながら、一緒に言葉で伝える力を育てていきましょう。