医療的ケア児にもSSTを。友達との関わりと「気持ちを伝える力」を育てるために
医療的ケアが必要なお子さんの支援というと、健康管理や医療的ケア、身体面への支援をイメージされる方が多いかもしれません。
もちろん、安心して過ごすための体調管理や安全面への配慮は欠かせません。
一方で、子どもたちが成長していく中では、
「友達とどう関わればいいのか分からない」
「自分の気持ちをうまく言葉にできない」
「嫌なことがあっても我慢してしまう」
といった、人との関わりに関する困りごとが見られることもあります。
そこで私たちは、医療的ケアが必要なお子さんにも、SST(ソーシャルスキルトレーニング)の視点が大切だと考えています。
大人とは話せても、同年代の子どもとの関わりで戸惑うことも
医療的ケアが必要なお子さんの中には、幼少期に入院や通院の期間が長く、同年代のお子さんと関わる機会が少なかったケースもあります。
入院中は、医師や看護師、療法士、ご家族など、大人と関わる機会が多くなります。
大人との会話では、相手がお子さんのペースに合わせてくれたり、言葉を補ってくれたりすることも多いため、比較的スムーズにコミュニケーションを取れることがあります。
しかし、同年代の子ども同士の関わりでは、
「一緒に遊ぼう」
「貸して」
「あとで」
「それは嫌」
「次は私の番」
など、その場に応じて自分から伝えることが必要になります。
そのため、
「大人とは上手に話せるのに、友達との関わりではどうしたらいいか分からない」
という姿が見られることもあります。
自分の気持ちを我慢しやすいお子さんもいます
医療的ケアが必要なお子さんは、日頃から検査や治療、身体的なケアを受ける機会があります。
その中で、
「少し我慢しよう」
「大人の指示に従おう」
という経験を重ねることもあります。
そのため、中には自分の気持ちを表に出すことよりも、周囲に合わせることが得意になるお子さんもいます。
もちろん、周囲と協力する力はとても大切です。
しかし、
本当は嫌なのに言えない。
困っているのに助けを求められない。
やりたいことがあるのに伝えられない。
という状態が続くと、本人の負担が大きくなることもあります。
そこでSSTでは、
「周りに合わせること」だけではなく、「自分の気持ちを適切に伝えること」
も大切にします。
SSTはどんなことを練習するの?
例えば、
友達の遊びに入りたい時の声のかけ方。
嫌なことをされた時の断り方。
困った時の助けの求め方。
自分の順番を伝える方法。
意見が違った時の伝え方。
疲れた時や休みたい時の伝え方。
こうした日常生活で起こりやすい場面を取り上げます。
実際の場面を想定して言葉を考えたり、職員や他のお子さんとロールプレイしたりしながら、
「こんな伝え方もあるんだ」
という選択肢を増やしていきます。
大切なのは、正解を一つ覚えることではありません。
その場面や相手に合わせて、
「自分はどうしたいか」「どう伝えたら相手にも分かりやすいか」
を考える経験を積むことです。
医療的ケアがあるからこそ、自分のことを伝える力も大切に
成長に伴って、お子さん自身が自分の身体の状態や必要な配慮について伝える場面も増えていきます。
例えば、
「少し休みたい」
「今はしんどい」
「手伝ってほしい」
「この活動は別の方法で参加したい」
と伝えることも大切なスキルです。
自立というと、「一人で何でもできること」をイメージしがちですが、
必要な時に、
「助けてください」
と伝えられることも、自立に向けた大切な力の一つです。
「みんなと同じことをしたい」という気持ちも大切に
歩くことができたり、活発に動くことができたりする医療的ケア児の場合、友達と同じ活動を「自分もやりたい」と思うことがあります。
一方で、その日の体調や身体の状態によっては、活動方法を調整する必要がある場合もあります。
そのような時に、
「できないから我慢しよう」
だけで終えるのではなく、
「どんな方法なら一緒に参加できるかな?」
「友達にはどう伝えたらいいかな?」
と一緒に考えることも大切です。
SSTは、こうした自分の気持ちと周囲との関係を整理する練習にもつながります。
我慢するためではなく、自分らしく人と関わるために
SSTは、子どもを周囲に無理に合わせるためのものではありません。
相手の気持ちを考えることと同時に、
自分の気持ちも大切にする。
嫌な時には伝える。
困った時には頼る。
やりたい時には「やりたい」と伝える。
その上で、相手と折り合いをつける方法を一緒に考えていきます。
療育センターエコルドネクストでは、医療的ケアや身体面への配慮だけでなく、お子さんが成長していく中で必要になるコミュニケーションや心理面への支援も大切にしていきたいと考えています。
医療的ケアが必要であっても、お子さんには友達との生活があり、自分の気持ちがあり、これからの社会生活があります。
「自分の気持ちを伝えながら、人とも心地よく関われる」
そんな力を、日々の療育の中で少しずつ育てていければと思っています。