“時間の感覚がない”〜“あと5分”がわからない子どものためにできること〜
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“時間の感覚がない”〜“あと5分”がわからない子どものためにできること〜

2025年10月24日 更新:2026年5月18日

「あと5分って言ったのに、どうしてまだ遊んでるの?」

「あと5分で終わりだよ」と伝えたのに、遊びをやめられない。
「もうすぐごはん」と声をかけても、全く動かない。
いざ片づけようとすると泣いたり怒ったりして大変になる——
そんな経験をした保護者の方も多いのではないでしょうか。

「約束したのに」「わざと無視してるの?」と思ってしまうかもしれません。
しかし実は、“時間がわからない”というのは、発達の自然な段階なのです。

子どもにとって「あと5分」や「すぐ」などの時間の表現は、
まだ“体で感じる”ことが難しい抽象的な概念です。

この記事では、子どもが“時間を理解する力”をどう育てていくのか、
そして「あと5分」が伝わるようになるための家庭での工夫を紹介します。

第1章:子どもにとって“時間”はどう見えているのか

時間は“見えないもの”

大人にとって「5分」は“時計で測れるもの”ですが、
子どもにとっては、ただの「よくわからない言葉」です。

脳の前頭前野や側頭葉が発達することで、
“過去・現在・未来”を順につなげて考える力が育っていきます。
しかし幼児期の子どもは、「今この瞬間」を中心に生きています。

そのため、

  • 楽しいことは「ずっと続く」と感じる
  • つまらないことは「永遠に終わらない」と感じる
  • 「あとで」「もうすぐ」が実感としてわからない

という状態になります。

声かけ例

  • 「あと5分」よりも、「この曲が終わったら片づけよう」
  • 「もうすぐ」よりも、「次はごはんの時間にするね」と具体的に。

第2章:“時間感覚”が育つ3つのステップ

ステップ①「順番の理解」

最初に育つのは、「何が先で、何があとか」という順序の感覚です。
たとえば、「朝ごはんのあとに歯みがき」「お風呂のあとに寝る」など、
“生活の流れ”を繰り返すことで、自然と順番の理解が育っていきます。

声かけ例

  • 「ごはんのあとに歯みがきしようね」
  • 「絵本を読んだらおやすみしようね」

時間を数字で伝えるより、行動のつながりで伝えることがポイントです。

ステップ②「持続時間の感覚」

次に、「どれくらい続くか」の感覚が少しずつ芽生えます。
この段階では、時計よりも**“体験の長さ”**が時間の基準になります。

たとえば、

  • 「1曲分」=約3分
  • 「1話のアニメ」=約15分
  • 「砂時計が落ちるまで」=約2分

こうした“見える時間”を繰り返し経験することで、
「5分くらい=これくらい」という感覚が育ちます。

声かけ例

  • 「この曲が終わったらお片づけしよう」
  • 「砂が全部落ちたら交代ね」

ステップ③「見通しと切り替え」

最終的に、子どもは“今”から“次”に切り替える力を身につけます。
でもこの切り替えには、感情の整理や注意の転換も必要です。

「楽しいことをやめる」「好きな遊びを終わらせる」のは、
子どもにとって“小さな喪失”でもあります。

声かけ例

  • 「あと1回やったら終わりにしようね」
  • 「終わったら次に〇〇をしよう」と“次の楽しみ”を伝える。

第3章:「あと5分」を伝える工夫

① 見える形で知らせる

子どもの脳は、“視覚的な情報”を最も理解しやすい構造をしています。
言葉だけではなく、「見える時間」を使いましょう。

おすすめツール

  • カウントダウンタイマー
  • 砂時計(2分/5分など)
  • 時計の針を「ここまで」と示す

声かけ例

  • 「針がここにきたら終わりにしようね」
  • 「砂が全部落ちたらごはんだよ」

② 「予告→確認→切り替え」の3ステップ

突然「やめようね」と言われると、脳の準備ができず混乱します。
「これから終わるよ」と予告を入れることが大切です。

  1. 予告:「あと5分で終わるよ」
  2. 確認:「もうすぐ終わりの時間だね」
  3. 切り替え:「次はごはんの時間だよ」

声かけ例

  • 「そろそろ終わりにする時間が近づいてきたね」
  • 「次はごはんだから、お腹空かないように準備しよう」

③ “終わり”を肯定的に伝える

「もう終わり」「ダメ」と言われると、子どもは“奪われた”と感じます。
「終わる=次の始まり」と感じられる言葉に変えてみましょう。

声かけ例

  • 「ここまでできたね、すごい!」
  • 「終わったら次に〇〇をしよう」
  • 「お片づけしたら、お楽しみの絵本にしよう」

第4章:時間感覚を育てる家庭の習慣

① “いつも同じ順番”を意識する

ルーティン(生活の流れ)を繰り返すことで、
子どもは自然と“時間の秩序”を体で覚えていきます。

たとえば、

  • 起きる → トイレ → 朝ごはん
  • 帰宅 → 手洗い → おやつ
  • お風呂 → パジャマ → 絵本 → おやすみ

この順番が安定することで、「次に何が起こるか」を予測できるようになり、
結果的に時間の感覚も育ちます。

声かけ例

  • 「次は何の時間だったかな?」
  • 「朝ごはんのあとはいつも何をするんだっけ?」

② “時間を体で感じる”遊びを取り入れる

遊びの中で、自然に時間の感覚を育てることができます。

おすすめの遊び

  • 「10秒かくれんぼ」(短い時間の感覚)
  • 「お風呂で数を数える」(持続時間の感覚)
  • 「音楽に合わせて動く」(リズムと順序の感覚)

声かけ例

  • 「10数えたら出てくるよ!」
  • 「この歌が終わったらゴールね!」

体験としての“時間”を重ねることが、理解の近道です。

③ 絵スケジュールで1日の流れを見せる

1日の活動を絵カードで見せると、
“時間の流れ”を具体的にイメージしやすくなります。

声かけ例

  • 「今はここだね。次はお風呂の時間だよ」
  • 「このカードが終わったらおやすみね」

「見通せる安心」が、時間を意識する力を育てます。

第5章:時間の理解が苦手な子どもの背景

① 実行機能の未発達

“やることを整理して順に進める”力(実行機能)がまだ育ちきっていないと、
時間の流れを自分で管理することが難しくなります。

声かけ例

  • 「まず〇〇をしてから、次に△△をしよう」
  • 「終わったら“できたカード”を貼ろうね」

② 注意の切り替えが難しい

ADHD傾向などがある場合、注意の切り替えが難しく、
“次に移る”ことに時間がかかることがあります。

この場合も、視覚的な予告区切りの合図が有効です。

声かけ例

  • 「ピピッと鳴ったらおしまいね」
  • 「この線まで積んだら終わりにしよう」

③ 感覚処理のズレ

感覚過敏や鈍麻があると、環境からの刺激を整理するのに時間がかかり、
結果的に“時間がずれる”ように見えることもあります。

声かけ例

  • 「静かなところで片づけしようか」
  • 「音が鳴ったら動くよ」

第6章:相談を検討するサイン

次のような状態が続く場合は、
専門機関での発達相談を検討してもよいでしょう。

  • 時間の切り替えで強いパニックが起こる
  • 日常生活全般で“終わり”を受け入れられない
  • 予定変更に極端な不安を示す
  • 時間だけでなく「順番」「待つこと」にも苦手さがある

発達支援センターや療育センターでは、
時間理解・実行機能・情動調整の発達を踏まえた支援を行っています。

最後に:“あと5分”は、育つ途中の力

「あと5分だよ」が通じないのは、わがままではなく、
“時間を感じる力”がまだ育っていないだけ

子どもは、“今”の中で一生懸命生きています。
時間感覚は、経験を通して少しずつ育つものです。

  • 数字ではなく“体験”で時間を伝える
  • 予告・確認・切り替えの3ステップを意識する
  • 終わりのあとに“次の楽しみ”を用意する

「あと5分」が通じるようになる日を焦らず待ち、
今の“時間を忘れるほど夢中な姿”を、あたたかく見守っていきましょう。

時間を理解する力は、“生きるリズム”の土台。
親子で少しずつ整えていくことが、子どもの安心と自立につながります。

療育コンサル 中山 のぞみ
D&I株式会社取締役兼療育センター長
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