“泣き止ませようとすると逆効果”〜泣く力の意味と寄り添い方〜
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“泣き止ませようとすると逆効果”〜泣く力の意味と寄り添い方〜

2025年10月23日 更新:2026年5月18日

「泣かないで」「早く落ち着いて」と思ってしまう瞬間

買い物中に泣き出す、寝る前にぐずる、思い通りにならなくて泣き叫ぶ…。
そんな場面で、「どうして泣くの?」「泣かないでほしい」と焦ったり、
「泣くたびに甘えてるのでは?」と不安になることはありませんか?

実は、子どもの“泣く”という行動には、深い意味があります。
それは「困っている」「助けてほしい」という単なるサインではなく、
自分の気持ちを整理しようとする“感情の調整行動”でもあるのです。

ところが、私たち大人が“泣き止ませよう”と急ぐほど、
子どもは余計に泣き続けてしまうことがあります。

この記事では、“泣き”という行動を「育ちの力」として見直し、
泣いている子どもにどう寄り添えばよいのか、
発達心理と情動調整の観点からわかりやすく解説します。

第1章:子どもにとって“泣く”とは何か

“泣く”は感情を整理するための行動

子どもの脳は、まだ感情を言葉で整理する機能が未発達です。
そのため、不安・怒り・悲しみ・疲れといった感情があふれると、
**「泣くことで心のバランスをとっている」**状態になります。

泣く=困らせている、ではなく、
泣く=安心を取り戻そうとしている、という理解が大切です。

声かけ例

  • 「びっくりしたんだね」
  • 「悲しい気持ちがいっぱいになったね」

言葉で気持ちを代弁してあげると、
子どもの脳が「自分の感情を理解してもらえた」と感じ、少しずつ落ち着きます。

“泣き止ませる”ではなく“気持ちに寄り添う”

大人が「泣かないの」「もう終わり」と止めようとすると、
子どもは「気持ちをわかってもらえなかった」と感じ、
さらに強く泣くことがあります。

それは、“理解してもらえるまで伝えよう”という自然な反応。

声かけ例

  • 「泣いてもいいよ」
  • 「気持ちが落ち着くまでここにいるね」

「泣くことを受け止めてもらえた」と感じると、
子どもは自分で気持ちを整理できるようになっていきます。

第2章:“泣く”を通して育つ心の力

① 自分の気持ちを感じ取る力

泣く経験を通して、子どもは「これは悲しい」「これは悔しい」といった感情を認識します。
この“気づく力”が育つことは、やがて「ことばで伝える力」につながります。

声かけ例

  • 「悔しかったね」
  • 「がんばってたもんね」

気持ちに名前をつけてもらうことで、
子どもは“泣き”を少しずつ“ことば”に変えていけるようになります。

② 安心を取り戻す力

泣くことで体にたまった緊張やストレスが少しずつ解放されます。
涙を流すことで副交感神経(リラックスの神経)が働き、
心拍や呼吸がゆっくりに戻っていくのです。

泣き切ったあとの“すっきりした表情”は、
まさに心が落ち着きを取り戻したサインです。

③ 他者との信頼を育てる力

泣いたときにそばにいてもらえる経験は、
「自分は受け止めてもらえる存在なんだ」という基本的信頼を育てます。

声かけ例

  • 「泣いても大丈夫。ママはここにいるよ」
  • 「悲しいときは、そばにいてもらえると安心だね」

この“泣いても見捨てられない”体験が、
やがて人とのつながりを信じる力になります。

第3章:泣いている子にどう寄り添えばいいか

① まずは「安全」を確保する

泣いているとき、子どもの体は緊張状態にあります。
まずは体を包むように抱きしめたり、背中をやさしくさすったりして、
身体的な安心を与えましょう。

声かけ例

  • 「大丈夫、ここにいるよ」
  • 「ギュッてして落ち着こうね」

抱っこやスキンシップは、
脳に「安心していい」というメッセージを伝えます。

② 気持ちを言葉にしてあげる

泣いている子どもは、まだ自分の感情を整理できていません。
「泣く=伝える」ことしかできない状態です。

声かけ例

  • 「悲しかったね」「悔しかったね」
  • 「がんばってたから、うまくいかなくて泣いちゃったんだね」

大人が“気持ちの通訳”をしてあげると、
子どもは「わかってもらえた」と感じて安心します。

③ 落ち着いてから“次”を考える

泣いている最中に理由を聞いたり、説得したりしても、
子どもの脳はまだ“聞く準備”ができていません。

まずは感情を出し切ることを優先し、
落ち着いてから一緒に振り返りましょう。

声かけ例

  • 「泣き終わったらお話ししよう」
  • 「今は気持ちがいっぱいなんだね」

落ち着いたあとに、「どうしたかったの?」「次はどうする?」と考える時間を持つと、
“泣いて終わり”ではなく、“泣いて整理して、学ぶ”体験になります。

第4章:泣く場面別の寄り添い方

【1】眠い・疲れたとき

→ 身体的な疲労が原因のときは、言葉よりも環境の調整を。

声かけ例

  • 「疲れたね、もう少しでおやすみしよう」
  • 「静かなところでゴロンしようか」

静かな空間と一定のリズム(トントンなど)が、心を落ち着かせます。

【2】思い通りにならないとき

→ “自分でコントロールできない” frustration(欲求不満)が原因。

声かけ例

  • 「やりたかったんだね」
  • 「できなくて悔しかったね」

否定せず気持ちを受け止めることで、
「ダメ」ではなく「理解された」と感じるようになります。

【3】叱られたあとに泣くとき

→ 「怒られた」よりも「受け止めてもらえなかった」と感じていることが多いです。

声かけ例

  • 「びっくりしたね」
  • 「ママは〇〇ちゃんのことが嫌いになったわけじゃないよ」

叱るときも、「あなたがダメ」ではなく「行動が危なかった」と伝えると、
心が傷つきにくくなります。

第5章:泣くことを“支援の対象”として考える

泣きやすさには個性がある

情動の感受性には個人差があります。
繊細で刺激に敏感な子ほど、感情の波が大きく泣きやすい傾向があります。

それは“弱さ”ではなく、感じ取る力が豊かであるという特性です。

声かけ例

  • 「優しい心を持っているから、いろんなことを感じるんだね」
  • 「泣くのは、心がちゃんと動いている証拠だよ」

泣く力は“自分を守る力”

泣けるということは、「安心して感情を出せる環境がある」ということ。
泣けない子ほど、心の中に“我慢”をため込んでいることもあります。

保護者が「泣いても大丈夫」と受け止めることで、
その子の“自己回復力(レジリエンス)”が育っていきます。

第6章:相談を検討するサイン

多くの子は成長とともに、泣く頻度や強さが落ち着いていきますが、
次のような場合は、専門機関への相談を検討してもよいでしょう。

  • 日常生活のほとんどで強い不安や泣きが続く
  • 落ち着くまでに極端に時間がかかる
  • 感覚刺激(音・光・触覚)への過敏さが強い
  • 言葉で気持ちを伝えることが難しい

発達支援センターや療育機関では、情動調整・感覚処理・発達段階を踏まえた支援を提案してもらえます。

最後に:“泣く”ことは、成長している証拠

子どもが泣くと、つい「どうしたら泣き止むか」を考えてしまいます。
けれど、泣くことは「成長している証拠」。

泣きながら感情を表現し、受け止めてもらうことで、
「自分は大切にされている」と感じるようになります。

  • 泣くのを止めるのではなく、気持ちに名前をつける
  • 抱きしめて、安心を伝える
  • 落ち着いてから、一緒に次を考える

泣く時間は、心を育てる時間。
涙のあとに見える“ホッとした笑顔”は、
その子が少し強くなった証でもあります。

「泣いてもいい」「泣いても大丈夫」。
そう感じられる家庭こそ、子どもの心が一番育つ場所です。

療育コンサル 中山 のぞみ
D&I株式会社取締役兼療育センター長
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