「“目を見て話せない”は問題?」——アイコンタクトと発達の関係
専門家ブログ

「“目を見て話せない”は問題?」——アイコンタクトと発達の関係

2025年7月30日 更新:2026年5月18日

こんにちは。
お子さんと日々会話をしていて、こんなふうに感じることはありませんか?

  • 「話しかけても目を合わせない…」
  • 「名前を呼んでも、こっちを見てくれない」
  • 「人と話すときに目をそらしてしまう」

「目を見て話す」ことができないと、保育園や幼稚園の先生からも心配の声が出たり、集団活動での関わりの難しさにつながることもあります。

でも、“目を合わせる”という行動は、実はとても高度で複雑な発達過程の一部であり、「できていない=発達に問題がある」とは限りません。

今回は、「アイコンタクトが苦手な子ども」の発達背景を解説し、保護者が家庭でできる支援の方法をご紹介します。


第1章 「目を合わせる」ってどういう力?

アイコンタクト(視線を合わせること)は、単に“目を向ける”という動作だけではありません。
そこには、複数の発達的なスキルが複雑に関わっています。

✅ アイコンタクトに必要な力

  1. 相手の存在を意識する力
  2. 相手の表情や意図を感じ取る力(社会的注意)
  3. 視線をコントロールする運動能力
  4. 言葉と視線を同時に使う協調力
  5. 感情的なつながり(愛着・安心感)

つまり、「目を合わせる」という行為は、単なるルールやマナーではなく、“こころ”と“からだ”を一緒に働かせるスキルなのです。


第2章 なぜ“目が合わない”の?

「目が合わない」「視線が合いにくい」子どもには、さまざまな理由があります。以下はよく見られる主な背景です。


(1)視線を合わせることが“緊張”や“不快”に感じられる

→ 特にASD(自閉スペクトラム症)傾向のある子どもは、目を見ること自体に強いストレスを感じることがあります。
そのため、「相手の声を聞く」「言葉を理解する」ことには集中していても、“視線はあえて外している”という場合も少なくありません。


(2)相手の存在を意識する力が育っていない

→ 発達初期では、相手の表情や反応に注意が向きにくく、「人とのやりとり」に意識が向きづらい子もいます。
このような子には、まず人と関わる楽しさや、安心感を育むことが大切です。


(3)視線と注意の切り替えが苦手

→ 「ものを見る」ことに集中していると、「人の顔を見て話す」ことが難しくなる場合もあります。これは、注意の分配や切り替えが未熟な子に多く見られます。


第3章 家庭でできる「アイコンタクト支援」5つの工夫

(1)「目を見て!」と言わず、楽しい場面で自然に目を合わせる

→ アイコンタクトは、「楽しい・うれしい・面白い」体験の中で、自然と生まれるものです。

✅ 例:

  • 高い高い、いないいないばあ
  • 一緒におもちゃを見ながら「すごいねー!」と声をかける
  • 好きな音楽に合わせて顔を見合わせる

→ 無理やり「こっち見て!」と指示するよりも、感情が動いた瞬間に目が合う経験を増やす方が効果的です。


(2)視線の“的”を用意する(目線の近くに興味のあるもの)

→ 子どもが“目”ではなく“物”に注意が向いてしまう場合、大人の目の近くに好きなものを見せる工夫が効果的です。

✅ 例:

  • 顔の横でおもちゃを見せる
  • 絵本を顔の高さで読む
  • おやつやジュースを「ここにあるよ〜」と見せながら話す

→ 視線が自然に大人の顔の方に向くことで、“人の顔を見る”ことへの抵抗感が薄れていきます。


(3)子どもの顔を“やさしく”のぞきこむ

→ 子どもが安心して過ごしているときに、そっと目の前に顔を持ってくるだけでも、「あ、ママだ」と目が合うことがあります。

✅ 注意:

  • 無理にのぞきこむのではなく、「見てくれたらうれしいな」くらいの気持ちで
  • 急に近づかず、タイミングを見てそっと近づく

(4)「視線が合うこと」を言葉と笑顔で喜ぶ

→ 子どもと目が合った瞬間に、「見てくれたね!うれしいな」と笑顔で言葉をかけましょう。
これは、目を合わせることが“いいこと”として記憶される大切な瞬間です。


(5)“アイコンタクト以外の関わり”も大切に

→ 視線が合わなくても、「声のトーン」「表情」「身振り」「間」など、コミュニケーションの多様な方法を使って関わることが大切です。
アイコンタクトは、その一部にすぎません。


第4章 “視線の困難”が続く場合は?

以下のような様子が続く場合は、専門機関に相談してみましょう。

  • 呼びかけてもほとんど反応がない
  • 顔や視線ではなく、物ばかりを見ている
  • 2歳以降でも“人と目を合わせる経験が非常に少ない”
  • 視線だけでなく、言葉や身振りによる関わりも薄い

→ ASD(自閉スペクトラム症)や、発達性の社会性困難などが関係している可能性があります。
児童発達支援・療育センターなどでのアセスメントと支援が有効です。


最後に:「目が合う」は“心が合う”の入口だけれど

私たちはつい「目を見て話さなきゃ」と思いがちですが、視線を通じた関わりは、子どもの発達の中でも“ゆっくり育つ力”のひとつです。

そして、目を合わせない=関係が築けないというわけでは決してありません。

  • 安心して関われる人との時間
  • 楽しいことを共有する経験
  • 「見てくれたね!」という喜びの積み重ね

このような関わりがあって初めて、“目を見ること”が「楽しい・うれしいこと」として心に育っていきます。

大切なのは、「視線を合わせること」そのものではなく、
“人とつながる心”を育てていくプロセスです。

焦らず、比べず、
その子なりのペースで“目と目の間にあるつながり”を育んでいきましょう。

療育コンサル 中山 のぞみ
D&I株式会社取締役兼療育センター長
プロフィールを見る 専門家ブログ一覧