重い障害があり成長をどう捉えればいいのか分からない時の視点
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重い障害があり成長をどう捉えればいいのか分からない時の視点

2026年3月2日 更新:2026年5月18日

寝たきりで、自分で動くことができない。言葉を話すことができない。目が合うかどうかも分からない。笑っているのか、泣いているのか、表情の変化も分かりにくい。重い障害のある子どもを前に、保護者は成長をどう捉えればいいのか分からず、途方に暮れることがあります。

周囲の子どもたちは、歩けるようになり、話せるようになり、様々なことができるようになっていきます。しかし、我が子はできることが増えるどころか、変化すらほとんど感じられない。発達検査を受けても、数値として成長が示されない。そのような現実に、保護者は深い悲しみと無力感を感じます。

この子は成長しているのだろうか。生きている意味はあるのだろうか。私は親として、何をしてあげられるのだろうか。そのような問いが、保護者の心を苦しめます。

しかし、重い障害があっても、子どもは確かに成長しています。ただ、その成長は数値では測れない、比較することのできない、その子だけの特別な成長なのです。保護者が成長の見方を変え、小さな変化を見つける視点を持ち、数値や比較を超えた成長の意味を理解することで、子どもの存在そのものの尊さに気づけるようになります。

重度心身障害とは

重い知的障害と重い身体障害

重度心身障害とは、重度の知的障害と重度の身体障害が重複している状態を指します。

多くの場合、寝たきりか座位が取れる程度で、自分で移動することができません。言葉によるコミュニケーションが難しく、食事や排泄などの日常生活すべてに全面的な介助が必要です。

医療的ケアとの関連

重度心身障害児の多くは、医療的ケアも必要とする場合もあります。

経管栄養、吸引、人工呼吸器、導尿など、生命を維持するための医療的ケアが日常的に必要なことが多いのです。

意思疎通の困難さ

重度心身障害児との意思疎通は、非常に困難です。

言葉が話せない、表情の変化が少ない、視線が合わない、反応が分かりにくい。何を感じているのか、何を求めているのか、保護者でも理解することが難しいと感じます。

発達の遅れではなく、発達の違い

重度心身障害児の状態は、発達が遅れているのではなく、発達の仕方そのものが違うと考えられます。

定型発達の子どもと同じ道筋で成長するのではなく、その子独自の道筋があるのです。しかし、その道筋は見えにくく、理解しにくいものです。

従来の成長の捉え方と限界

発達段階という物差し

一般的に、子どもの成長は発達段階という物差しで測られます。

首がすわる、寝返りをする、お座りができる、ハイハイする、立つ、歩く。言葉が出る、二語文を話す、会話ができる。そのような段階を経て成長していくのが、定型発達です。

発達検査の数値

発達検査では、子どもの発達を数値で表します。

発達指数、知能指数、各領域の発達年齢など。しかし、重度心身障害児の場合、これらの数値はほとんど変化しないか、測定不能となることが多いのです。

比較による評価

周囲の子どもと比較することで、成長を確認するという方法もあります。

しかし、重度心身障害児の場合、比較すればするほど、我が子ができないことばかりが際立ち、保護者は苦しくなります。

できることが増えるという成長観

一般的に、成長とはできることが増えることだと考えられています。

しかし、重度心身障害児の場合、新しくできるようになることは非常に少なく、この成長観では成長を捉えられないのです。

これらの物差しの限界

発達段階、発達検査の数値、比較、できることの増加。これらの物差しは、重度心身障害児の成長を測るには適していません。

これらの物差しを当てはめ続けると、保護者は成長を感じられず、絶望してしまいます。別の物差し、別の視点が必要なのです。

小さな変化を見つける視点

表情の微妙な変化

重度心身障害児も、表情を変えています。ただ、その変化は非常に微妙で、見逃しやすいのです。

実践のポイント

  • いつもより目が開いている
  • 口角がわずかに上がっている
  • 眉間のしわが緩んでいる
  • 顔の緊張が取れている
  • 写真や動画で記録し、比較する

保護者がこのような微妙な変化に気づけるようになると、子どもが確かに感情を持っていることが分かります。

呼吸や体の状態の変化

体の状態にも、わずかな変化があります。

実践のポイント

  • 呼吸が落ち着いている
  • 体の緊張が緩んでいる
  • 筋肉の硬さが変わる
  • 手足の動きに変化がある
  • 体調が安定している期間が増える

保護者がこれらの変化に気づくことで、子どもの状態が改善していることが分かります。

環境への反応

音、光、温度、触れられることなど、環境への反応を観察します。

実践のポイント

  • 音楽に反応して体が緩む
  • 好きな声に反応する
  • 触れられることを嫌がらなくなる
  • お風呂で気持ちよさそうにする
  • 抱っこされると落ち着く

保護者がこれらの反応を見つけることで、子どもが環境を感じていることが分かります。

親との関係の深まり

長い時間を共に過ごすことで、親子の関係は深まっていきます。

実践のポイント

  • 親の声を聞くと落ち着く
  • 親が抱くと安心する
  • 親の存在を感じているようだ
  • 親が離れると不安そうになる
  • 絆が深まっている実感

保護者がこの関係性に気づくことで、子どもが親を認識していることが分かります。

医療的な安定

医療的な状態が安定することも、成長の一つです。

実践のポイント

  • 入院の回数が減る
  • 体調を崩しにくくなる
  • 薬の量が減る
  • 在宅で過ごせる時間が増える
  • 生命力が強くなる

保護者がこの安定に気づくことで、子どもの体が強くなっていることが分かります。

季節を重ねること

ただ季節を重ね、年齢を重ねることも、成長です。

実践のポイント

  • 今年もこの季節を迎えられた
  • また誕生日を迎えられた
  • 去年よりも安定している
  • 一緒に過ごせる時間が増えた
  • 生きていることそのものが成長

保護者がこの視点を持つことで、生きていることの尊さに気づけます。

数値や比較を超えた成長の意味

存在そのものの価値

重度心身障害児の価値は、何かができることにあるのではなく、存在していること自体にあります。

実践のポイント

  • この子がいるだけで意味がある
  • できることで価値が決まるのではない
  • 生きているだけで尊い
  • その存在が家族に影響を与えている
  • 比較や評価を超えた価値

保護者がこの価値観を持つことで、子どもを丸ごと受け入れられます。

家族に与える影響

重度心身障害児の存在は、家族を変えます。

実践のポイント

  • 家族が優しくなる
  • 命の尊さを学ぶ
  • 当たり前のことに感謝できるようになる
  • きょうだいが思いやり深く育つ
  • 家族の絆が深まる

保護者がこの影響に気づくことで、子どもの存在の意味を見出せます。

社会への問いかけ

重度心身障害児の存在は、社会に問いかけます。

実践のポイント

  • 効率や生産性だけが価値ではない
  • 多様性を認める社会の必要性
  • 弱い立場の人を大切にすること
  • 共生社会の実現
  • 社会を変える力

保護者がこの視点を持つことで、子どもの存在の社会的意味を見出せます。

親自身の成長

子どもを育てることで、親も成長します。

実践のポイント

  • 忍耐強くなった
  • 小さな幸せに気づけるようになった
  • 人の痛みが分かるようになった
  • 本当に大切なものが見えるようになった
  • 親として人として成長した

保護者がこの成長に気づくことで、子どもが自分を育ててくれたことが分かります。

一緒に過ごす時間の意味

何ができるかではなく、一緒に過ごす時間そのものに意味があります。

実践のポイント

  • 一緒にいられることが幸せ
  • 抱きしめる温かさ
  • 呼吸を感じる安心感
  • 今この瞬間を共有する喜び
  • かけがえのない時間

保護者がこの時間の価値に気づくことで、今を大切にできます。

生命の尊厳

どんな状態であっても、生きていることは尊いことです。

実践のポイント

  • 生命そのものの価値
  • 生きているだけで意味がある
  • 命の重さは誰もが同じ
  • 尊厳を持って生きる権利
  • 命を大切にする

保護者がこの尊厳を理解することで、子どもの命を心から尊重できます。

記録することの大切さ

写真や動画での記録

微妙な変化は、記録しないと見逃してしまいます。

実践のポイント

  • 毎日写真を撮る
  • 表情の変化を記録する
  • 動画で体の動きを残す
  • 過去と比較する
  • 成長を可視化する

保護者が記録することで、変化に気づきやすくなります。

日記やメモ

日々の様子を文章で記録することも有効です。

実践のポイント

  • 今日の様子を書く
  • 気づいたことをメモする
  • 体調や反応を記録する
  • 後で読み返す
  • 変化が見えてくる

保護者が日記をつけることで、成長の軌跡が見えます。

医療記録の活用

医療的な記録も、成長を示すものです。

実践のポイント

  • 入院回数の変化
  • 薬の量の変化
  • 体重や身長の変化
  • 医師からのコメント
  • 医療的な改善を確認する

保護者が医療記録を見返すことで、客観的な変化が分かります。

成長の記録ノート

専用のノートを作り、成長を記録します。

実践のポイント

  • 小さな変化を書き留める
  • 嬉しかったことを記録する
  • できるようになったことを書く
  • 一年後に読み返す
  • 成長を実感する

保護者が成長ノートをつけることで、確実に成長していることが分かります。

専門家との関わり

医師や看護師との対話

医療的な視点から、子どもの状態を教えてもらいます。

実践のポイント

  • 定期的に状態を確認する
  • 変化について質問する
  • 専門家の視点を学ぶ
  • 小さな改善を教えてもらう
  • 安心感を得る

保護者が専門家と対話することで、客観的な評価が得られます。

理学療法士や作業療法士

リハビリの専門家は、体の変化に敏感です。

実践のポイント

  • 関節の可動域の変化
  • 筋肉の状態の変化
  • 姿勢の変化
  • わずかな動きの変化
  • 専門的な視点を学ぶ

保護者がリハビリ専門家の視点を学ぶことで、体の変化に気づけます。

療育施設のスタッフ

日々関わるスタッフは、子どもの変化に気づいてくれます。

実践のポイント

  • スタッフからの報告を聞く
  • 施設での様子を共有する
  • 第三者の視点を得る
  • 家では見せない表情を知る
  • 励ましをもらう

保護者がスタッフと情報交換することで、新たな発見があります。

同じ境遇の保護者とのつながり

親の会や交流会

同じように重度心身障害児を育てる保護者と出会うことが大切です。

実践のポイント

  • 親の会に参加する
  • 経験を共有する
  • 孤独ではないと実感する
  • 励まし合う
  • 成長の見方を学ぶ

保護者が仲間とつながることで、心の支えができます。

オンラインコミュニティ

外出が難しい場合、オンラインでつながることもできます。

実践のポイント

  • SNSで情報交換する
  • ブログを読む、書く
  • オンライン交流会に参加する
  • 24時間いつでもつながれる
  • 孤立を防ぐ

保護者がオンラインでつながることで、いつでも支え合えます。

実際の場面での対応例

【場面1】発達検査で測定不能と言われた

❌保護者の悪い対応:この子には成長がないんだ、と絶望する

✅保護者の良い対応:数値では測れないけれど、この子なりの成長があると考える。表情の変化、体の状態など、別の視点で成長を見る

保護者のポイント

  • 数値が全てではない
  • 別の視点を持つ
  • 小さな変化を見る

【場面2】周囲の子と比較して辛い

❌保護者の悪い対応:あの子はできるのに、うちの子はと落ち込む

✅保護者の良い対応:比較することをやめる。この子はこの子、他の子は他の子。この子の成長はこの子だけのものと考える

保護者のポイント

  • 比較しない
  • その子だけを見る
  • 個別性を尊重する

【場面3】何も変化がないように見える

❌保護者の悪い対応:変化がないから、意味がないと思う

✅保護者の良い対応:変化は必ずある、見えにくいだけだと考える。写真を撮って比較する、記録をつける、専門家に聞く

保護者のポイント

  • 変化は必ずある
  • 記録する
  • 専門家に聞く

【場面4】生きている意味が分からない

❌保護者の悪い対応:この子には価値がないのではと思ってしまう

✅保護者の良い対応:存在そのものに価値がある、できることで価値が決まるのではないと理解する。この子が自分を成長させてくれたと気づく

保護者のポイント

  • 存在の価値を認める
  • 自分の成長に気づく
  • 意味を見出す

【場面5】将来への希望が持てない

❌保護者の悪い対応:この先ずっとこのままだと絶望する

✅保護者の良い対応:将来ではなく、今日一日を大切にすると決める。今日も一緒にいられることに感謝する

保護者のポイント

  • 今を大切にする
  • 一緒にいられることに感謝
  • 一日一日を生きる

療育現場での実例

ある保護者は、寝たきりで意思疎通の難しい子どもを育てていました。発達検査では測定不能、周囲の子どもたちがどんどん成長していく中で、我が子だけが変わらないように見えました。

保護者は、この子は成長していないのではないか、生きている意味があるのかと苦しんでいました。毎日のケアをしていても、虚しさを感じることがありました。

療育施設のスタッフが、写真を見せながら、半年前と今を比較してみてくださいと言いました。保護者が写真を並べて見ると、表情がわずかに柔らかくなっていること、体の緊張が緩んでいることに気づきました。

スタッフは、これは大きな成長ですよ、と言いました。数値では測れないけれど、この子は確かに成長している、表情が豊かになっている、安定している、それは素晴らしいことだと。

保護者は、そう言われて初めて、成長を感じました。できることが増えるだけが成長ではない、この子なりの成長があるのだと理解できたのです。

それからは、毎日写真を撮り、小さな変化を記録するようになりました。表情の変化、体の状態、反応の違い。それらを見つけることが喜びになりました。

一年後、保護者は、この子は確かに成長している、数値では表せないけれど、確実に変わっている、そしてこの子の存在そのものに価値があると、心から思えるようになっていました。

保護者は、あの時スタッフが成長を教えてくれたことで、子どもの見方が変わった、成長の物差しを変えたことで、子育てが前向きになったと語ってくれました。

大切だったのは、従来の物差しを手放し、その子だけの成長の形を見つけたことでした。

成長は数値では測れない

重い障害のある子どもの成長は、発達段階や検査の数値では測れません。しかし、確かに成長しているのです。

表情の微妙な変化、体の状態の安定、環境への反応、親との関係の深まり、医療的な改善、そして季節を重ねること。それらすべてが、その子の成長なのです。

そして何より、その子が存在していること自体に、かけがえのない価値があります。できることで価値が決まるのではなく、生きていること、そこにいることそのものが尊いのです。

重度心身障害児を育てることは、保護者に多くのことを教えてくれます。命の尊さ、小さな幸せ、当たり前のことへの感謝、人の優しさ。その学びもまた、子どもが与えてくれる贈り物なのです。

保護者が従来の成長の物差しを手放し、その子だけの成長を見つけ、存在そのものの価値を認めることで、子育ては苦しみから喜びへと変わり、子どもと共に過ごす今この瞬間が、かけがえのない宝物になっていくでしょう。

今日も重度心身障害児を育てる保護者がいます。その日々の中で、どうか成長を見つけてほしい、小さな変化に喜びを感じてほしい、そして何より、その子の存在そのものを愛してほしいと願います。数値や比較を超えた、その子だけの成長が、必ずそこにあるのですから。

療育コンサル 中山 のぞみ
D&I株式会社取締役兼療育センター長
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