“がんばれる子”より、“立ち直れる子”を育てよう
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“がんばれる子”より、“立ち直れる子”を育てよう

2025年10月27日 更新:2026年5月18日

「がんばること」が正義のような社会で

私たちは、小さいころからずっと「がんばること」を教えられてきました。
テストでいい点を取るためにがんばる。
運動会で1位を取るためにがんばる。
仕事でも、「がんばります!」は美しい言葉のように扱われる。

でも――。
今の時代に本当に必要なのは、「がんばれる子」ではなく、「立ち直れる子」じゃないかと、私は思うのです。

AIが社会に入り込み、変化のスピードが加速する中で、
がんばる方向を間違えたり、がんばっても報われない状況がいくらでも起きる。
そんな時代に必要なのは、「何度でもやり直せる力」「失敗を受け止めて前に進む力」。

つまり、“レジリエンス(心理的回復力)”です。

「がんばる」と「立ち直る」は、まったく違う力

がんばることと、立ち直ること。
この2つは似ているようでいて、まったく別の能力です。

がんばる力は、「目の前の課題に集中する力」。
立ち直る力は、「失敗しても自分を責めすぎず、前に進む力」。

がんばるだけでは、壁にぶつかったときに折れてしまうことがあります。
一方で、立ち直る力がある子は、倒れても自分で立ち上がれる。

そして、この“立ち直る力”は、才能ではなく環境から育つ力なんです。

「がんばれる子」は、大人の都合で作られていないか?

支援や教育の現場にいると、「この子はがんばり屋さんですね」と褒められる子がたくさんいます。
でも、その裏には、**「大人の期待に応えようとする子」**の姿が隠れていることも多い。

「先生が喜ぶから頑張る」
「お母さんに褒められたいから頑張る」

それ自体が悪いことではありません。
でも、「がんばること」が“自分を保つ手段”になってしまうと、苦しくなるのです。

特に発達特性のある子たちは、周囲の空気を読む力が強く、
“期待されている役割”を感じ取って、無理をしてしまうことが多い。

そして、限界を超えたときに一気に崩れる――。
そんなケースを、私は何度も見てきました。

「立ち直れる子」は、安心できる大人のもとで育つ

立ち直る力は、安心の積み重ねから生まれます。

「失敗しても大丈夫」
「間違えてもやり直せる」
「あなたの価値は変わらない」

そう言ってくれる大人の存在が、子どもの回復力を育てます。

療育や発達支援の現場では、
「できた・できない」を評価するよりも、
「やってみようとした」そのプロセスを認めることが大切です。

小さな挑戦を見逃さず、「そこまで考えたんだね」「やってみたのがすごいね」と伝える。
この“肯定の積み木”が、心の強さをつくります。

失敗を「消す」より、「一緒に整える」

現代の教育は、まだまだ「失敗=悪いこと」と捉えがちです。
でも、失敗こそが学びの源です。

立ち直る力を育てるためには、
「失敗をどう扱うか」が大人の腕の見せどころ。

子どもが間違ったとき、
「なんでそんなことしたの!」と怒るのではなく、
「どうしてそう思ったの?」「次はどうしたらいいかな?」と一緒に考える。

失敗を「消す」より、「整える」。
それが、立ち直る力を育てる支援・教育の姿勢です。

幼児期の「非認知能力」が、一生を支える

最近、「非認知能力」という言葉がよく聞かれるようになりました。
これは、テストの点数のように数値化できない力――
たとえば「我慢する力」「感情をコントロールする力」「共感する力」などを指します。

この非認知能力こそ、立ち直る力の土台になります。

スタンフォード大学の「マシュマロ実験」では、
幼児期に我慢する力を持った子ほど、将来の学業成績や人間関係が良好だったという結果が出ています。

つまり、「幼児期の小さな自己調整力」が、大人になってからの“生きる力”を決める。

療育や幼児教育でやっていることは、まさにこの非認知能力の育成なんです。
ボール遊び、順番を待つ、友達と交代する――
一見ただの遊びのようで、実は「社会を生き抜くスキル」の訓練でもあります。

「立ち直り方」は、教えられる

では、どうやって“立ち直れる子”を育てるのか?

それは、「立ち直り方」を具体的に教えることです。

たとえば――

  • 失敗したときは、まず深呼吸する
  • 次に「できなかったこと」を言葉にして整理する
  • それから「次にどうしたいか」を一緒に考える

この“立ち直りのプロセス”を、何度も繰り返す。
すると、子どもは「落ち込んでも戻れる」感覚を身につけます。

実は、これは発達支援の現場でも大切にしている方法です。
行動の修正ではなく、「感情の整理」から始める。
感情が整うと、行動も自然に変わっていきます。

大人もまた、“立ち直る練習”が必要

子どもの立ち直りを支えるためには、大人自身も立ち直れる人であることが大切です。

支援者も、保護者も、失敗することがあります。
思いどおりにいかない日もある。
でも、そこで自分を責め続けてしまうと、子どもにも「失敗=悪いこと」というメッセージを与えてしまう。

だからこそ、大人も「失敗したら立ち止まって、整えて、また進む」。
この姿を見せることが、子どもへの最高の教育です。

AI時代に必要なのは、“やり直せる力”

AIがどんどん賢くなっていく時代。
効率も正確さも、もはや人間が勝てる領域ではなくなってきています。

そんな時代にこそ、人間にしかできないこと――
それは、“立ち直ること”です。

AIは失敗しないけれど、
人間は失敗し、迷い、感情を持ち、そこから学び直せる。

だからこそ、AI時代に生きる子どもたちに必要なのは、
「間違えない力」ではなく、「間違えても戻ってこれる力」。

それが、本当の意味での“生きる力”です。

「がんばれる子」より、「立ち直れる子」を

がんばることは素晴らしい。
でも、がんばり続けることが“前提”になってしまうと、人は壊れます。

子どもたちには、がんばれなくなる日もあっていい。
泣いても、逃げても、休んでもいい。

大切なのは、「もう一度、立ち上がれること」。

支援者も、保護者も、経営者も――
それぞれの現場で、がんばることよりも「立ち直ること」を育てる文化を作っていく。

その先に、子どもも大人も“やさしく、強く、生きられる社会”があると、私は信じています。

療育コンサル 中山 のぞみ
D&I株式会社取締役兼療育センター長
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