“急にテンションが上がる”——興奮スイッチとブレーキの発達
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“急にテンションが上がる”——興奮スイッチとブレーキの発達

2025年10月30日 更新:2026年5月18日

「突然ハイテンション!」「止まらない!」——その裏にある脳のしくみ

「静かに遊んでいたのに、突然走り出す」
「楽しくなりすぎて止まらない」
「注意しても笑ってごまかす」

そんな“急にテンションが上がる”姿に、どう対応していいかわからず困ることはありませんか?

実は、これらの行動は“わざと”でも“聞いていない”わけでもなく、
脳の興奮スイッチとブレーキの発達バランスによるものです。

子どもはまだ、自分の感情や行動をうまくコントロールする力(自己調整力)が育っていません。
興奮しやすく、ブレーキがかかりにくいのは、成長途中の脳の自然な姿なのです。

この記事では、「急にハイテンションになる」「止まらない」子どもたちの行動を、
神経発達と感情調整の観点からわかりやすく解説し、
家庭でできる“ブレーキを育てる関わり”と“安心して落ち着ける工夫”を紹介します。

第1章:子どもの“興奮スイッチ”とは?

興奮スイッチ=快の刺激に反応する脳の回路

楽しいこと、驚いたこと、刺激の強いこと——
子どもの脳はそれらを「もっとやりたい!」と感じるようにできています。

脳内ではドーパミンという神経伝達物質が分泌され、
ワクワクや快感を引き起こします。
この“快の回路”が働くと、体も心も一気に活発になります。

しかし幼児期は、まだブレーキをかける前頭前野の働きが未成熟なため、
アクセルだけが全開になることがよくあります。

声かけ例

  • 「楽しいね!でもちょっと休けいしよう」
  • 「笑いすぎて頭がグルグルしてきたね。深呼吸してみようか」

楽しさを否定せず、“切り替えるきっかけ”を言葉で伝えるのがポイントです。

興奮スイッチが入りやすい場面

  • 音や光などの刺激が強いとき(イベント・外食・テレビ)
  • 人が多い・注目される場面
  • 新しいおもちゃや体験をしたとき
  • 疲れ・空腹・睡眠不足などで心身が不安定なとき

つまり、「嬉しい」「不安」「疲れた」といった感情の高ぶりが、
“テンションが上がる行動”として現れているのです。

第2章:“ブレーキ”はどのように育つのか

ブレーキをかける脳の働き

脳の前頭前野には「やめる」「待つ」「落ち着く」などの制御機能があります。
しかしこの部分は、生まれてすぐに働くわけではなく、
10歳頃まで発達を続ける“後伸びの脳”です。

そのため、3〜5歳くらいの子どもが“ブレーキをかけられない”のは当然のこと。
それを責めるのではなく、少しずつ練習することが大切です。

声かけ例

  • 「止まれゲームしよう!」(遊びの中でブレーキ練習)
  • 「1・2・3でストップ!」(身体を使って切り替えの練習)

“待つ力”の前に、“切り替える力”

「待つ」には、感情を切り替える力が必要です。
つまり、ブレーキ=我慢ではなく、“楽しい→落ち着く”の切り替え力なのです。

家庭での工夫

  • 遊びを切り上げるときは「あと3回でおしまい」など予告する
  • 切り替え後に安心できる活動(絵本・抱っこ・深呼吸)を準備しておく

声かけ例

  • 「あと1回で終わりにしようね。そのあと絵本読もう」
  • 「今はテンションMAXだね。落ち着く場所に行こうか」

第3章:“急にテンションが上がる”行動の背景

① 感覚刺激への敏感さ(感覚過敏・感覚探求)

光・音・匂い・触覚などに敏感な子どもは、刺激を受け取るたびに興奮します。
また逆に、刺激を求めるタイプの子どもは、体を動かしたり大声を出したりして、
自分で感覚刺激を作り出そうとします。

対応のヒント

  • 照明を落とす・音量を下げる・静かな空間をつくる
  • 感覚を満たす「揺れ」「重み」「深呼吸」を取り入れる

声かけ例

  • 「お部屋を少し静かにして、体をゆらゆらしよう」
  • 「ぎゅっと抱っこして、力をぬこうね」

② 情報処理の難しさ

たくさんの刺激を一度に処理するのが難しい子どもは、
混乱や不安が高まると、興奮で表現することがあります。

対応のヒント

  • 一度に伝える情報を減らす(「〜してから〜して」ではなく1つずつ)
  • ジェスチャーや絵カードを使って視覚的に示す

声かけ例

  • 「まずおもちゃを片づけてから、次に絵本ね」
  • 「順番カード見てみよう」

③ 不安や緊張の裏返し

実は“テンションが高い”行動は、緊張を隠すための反応でもあります。
人前でふざける、笑いすぎる、急に大きな声を出す——
これは「怖い」「どうしていいかわからない」という心の防衛反応なのです。

声かけ例

  • 「ちょっとドキドキしてるのかな」
  • 「楽しいけど、びっくりもしてるね」

感情を代弁してあげると、子どもは落ち着きを取り戻しやすくなります。

第4章:家庭でできる“ブレーキの育て方”

① 体を使った「ストップ遊び」

遊びの中で“止まる”経験を増やすと、自然に抑制力が育ちます。

おすすめ遊び

  • 「だるまさんがころんだ」
  • 「赤・青ゲーム」(赤でストップ、青で動く)
  • 「ストップミュージック」(音が止まったら静止)

声かけ例

  • 「ピタッと止まれたね!かっこいい!」
  • 「ブレーキがうまくかかったね!」

② 深呼吸・スローダウンの習慣

呼吸は、興奮と落ち着きを切り替えるスイッチです。
深呼吸を「落ち着く儀式」として習慣化しましょう。

声かけ例

  • 「風船をふくらませるようにフゥ〜って息を出そう」
  • 「一緒に3回だけ深呼吸してみようか」

③ 感情カードや表情を使う

「うれしい」「びっくり」「いらいら」などの感情をカードで見せると、
自分の状態を“外から見る”練習になります。

声かけ例

  • 「今の気持ちカード、どれに近いかな?」
  • 「テンションMAXは“わくわくカード”かな?」

④ 落ち着ける“安全基地”をつくる

テンションが上がりすぎたとき、静かにできる“避難場所”を決めておきましょう。
ソファの角、布団の中、クッションのテントなど、
安心できる“おこもりスペース”が効果的です。

声かけ例

  • 「ちょっとクッションの部屋で休けいしようか」
  • 「ここは落ち着く場所だよ。いつでも来ていいからね」

第5章:園や学校でのトラブルを減らす視点

「テンションが高い=迷惑」ではなく、「調整中」ととらえる

大人が“うるさい”“ふざけてる”と受け止めると、子どもは「怒られた」と感じてしまいます。
でも実際は、“興奮してブレーキが間に合っていないだけ”のことが多いのです。

先生や周囲に、「切り替えが苦手な特性がある」ことを共有し、
叱るより、落ち着ける方法を一緒に探す方向で関わりましょう。

声かけ例(園での連携時)

  • 「楽しくなりすぎたときは、〇〇コーナーに誘ってもらえると助かります」
  • 「落ち着く合図(深呼吸など)を一緒に練習しています」

第6章:相談を検討してもいいサイン

次のような様子が長く続く場合は、発達支援センターや療育機関への相談を検討しましょう。

  • 興奮するとパニックになり手が出る・物を投げる
  • 切り替えに30分以上かかる
  • 興奮後に強い疲労・頭痛・情緒不安がある
  • 刺激に対する過敏さ・感覚探求が極端に強い

専門機関では、興奮・抑制のバランスや感覚処理の特徴を丁寧に見立ててくれます。

最後に:“止まらない子”は、“感じる力”が豊かな子

テンションが上がりやすい子は、周りの刺激や気持ちを敏感に受け取れる子です。
それは“困った特性”ではなく、世界を豊かに感じる力でもあります。

ただ、その豊かさを安心して使えるようにするには、
「興奮しても大丈夫」「落ち着ける場所がある」という体験が必要です。

  • 楽しさを否定せず、“休けい”を提案する
  • ストップ遊びや深呼吸でブレーキ練習をする
  • 落ち着ける場所を一緒に決めておく

これらの積み重ねが、子どもの“自己調整力”をゆっくり育てていきます。

「止まらない」時間の中にも、確実に成長の芽はあります。
その芽を、叱るのではなく“整える関わり”で支えていくことが、
落ち着きのある未来につながる第一歩です。

療育コンサル 中山 のぞみ
D&I株式会社取締役兼療育センター長
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