“遊びが広がらない”のはなぜ?——同じ遊びばかりを繰り返す子への関わり
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“遊びが広がらない”のはなぜ?——同じ遊びばかりを繰り返す子への関わり

2025年10月16日 更新:2026年5月18日

「毎日同じ遊び…これでいいの?」と感じるとき

「今日もまたブロックばっかり」
「ままごとで“カレー作り”ばかりで、ほかの遊びに誘っても乗らない」
「砂場でも同じ型、同じ順番、同じ道具」

そんな姿を見て「発達に遅れがあるのかな?」「もっといろんな遊びを経験させないと」と心配になる保護者の方は多いのではないでしょうか。

でも、実は“同じ遊びを繰り返す”というのは、子どもが安心して学びを積み重ねている証拠なのです。
その遊びの中で、子どもは確実に「何かを獲得しようとしている」。

この記事では、「遊びが広がらない」ように見える子どもの内側で起きていることを発達の観点から解説し、家庭や保育でできる具体的な関わり方を紹介します。

第1章:同じ遊びを繰り返すことの意味

遊びは「安心」と「学び」の場

子どもにとって遊びは、世界を理解するための一番大切な学びの時間です。
だからこそ、安心できるパターンを選ぶというのは自然な姿。

同じ遊びを繰り返すことで、子どもは「結果を予測できる安心感」を得ています。
たとえば、ブロックを積む・砂を固める・お皿に並べるなどの行為は、感覚的にも安定をもたらします。

「繰り返し」は成長の基礎

心理学者ピアジェは、子どもが同じ行為を繰り返すことを「円環反応」と呼びました。
これは「試して、確認して、安心する」プロセスであり、発達において重要な段階です。

同じ遊びを続けるのは、飽きていないからではなく、
「もっと深く理解したい」「感覚を確かめたい」という強い意欲の表れなのです。

第2章:なぜ遊びが広がりにくいのか?

① 感覚の安定を求めている

手触り・音・形など、感覚的に心地よい刺激を繰り返し体験することで、子どもは安心します。
感覚統合がまだ発達の途中にある子にとって、「慣れた感覚」を繰り返すことは大切なセルフケアです。

声かけ例

  • 「そのブロックの音、気持ちいいんだね」
  • 「同じ形を並べるの、好きなんだね」

② 自分の“ルール”を確かめている

「こうしたら、こうなる」という法則を体験的に学ぶ時期でもあります。
大人から見ると同じに見える行為も、子どもの中では微妙な違いを観察しているのです。

声かけ例

  • 「今日はいつもより高く積んでみたね」
  • 「昨日とは少し形が違うね、工夫したの?」

③ 新しい遊びに移るには“安心”が必要

新しい遊びに誘っても拒否するのは、今の遊びが「安心できる拠点」だから。
安心が十分に得られていないときに無理に誘うと、かえってストレスになります。

声かけ例

  • 「今の遊びが好きなんだね。もう少しやってからでもいいよ」
  • 「やってみたい気分になったら、いつでも教えてね」

④ 発達特性が関係する場合も

ASDの子は、予測できる世界を好む傾向があり、同じ遊びを繰り返すことが安心につながります。
ADHDの子は興味が移りやすく、逆に「同じ遊びで落ち着ける時間」を求めることもあります。

どちらの場合も、「繰り返し」はその子にとっての自己調整の手段なのです。

第3章:遊びを広げるための家庭での工夫

① 今の遊びを“認める”ことが第一歩

「また同じことしてる」と感じても、まずはそれを価値のある行動として受け止めることから。

声かけ例

  • 「その遊び、好きなんだね」
  • 「同じことを繰り返してるけど、すごく集中してるね」

子どもが「好きな遊びを受け入れてもらえた」と感じることで、次の挑戦への余裕が生まれます。

② 子どもの“興味の中身”を観察する

同じ遊びをしているように見えても、注目している部分は毎回少し違うことがあります。
「どこに興味があるのか?」を丁寧に見ると、そこから新しい関わりの糸口が見えます。

声かけ例

  • 「今日は赤いブロックばかり使ってるね」
  • 「同じ型でも、形の並べ方が違うね」

③ 「ちょっとだけ変化」を入れてみる

完全に新しい遊びを提示するのではなく、今の遊びの中に小さな変化を入れていくのがコツです。

声かけ例

  • 「ブロックに紙コップを足してみようか?」
  • 「おままごとでジュース屋さんにしてみようか?」

「少しだけ変える」ことで、安心感を保ちながら遊びの幅を広げることができます。

④ 一緒に“気づく”体験を共有する

「こうしたらどうなる?」を一緒に試して、発見を共有します。
親が感動を見せることで、子どもも新しい刺激に前向きになります。

声かけ例

  • 「あ!これ、前と違うね!」
  • 「ママもびっくりした!こんな形ができるんだね」

⑤ 遊びの終わりを区切る

繰り返しが止まらないときは、「終わり」を分かりやすくすることも大切です。
「あと3回でおしまいね」「次で片づけようね」と予告することで、気持ちの切り替えを助けます。

声かけ例

  • 「これを最後にして、おやつにしようか」
  • 「3回作ったらおしまいね。次は絵本読もう」

第4章:園や学校との連携

園でも「同じ遊びばかりしている子」は多く見られます。
先生に理解してもらうために、家庭での様子を共有しておくとよいでしょう。

伝えておきたいこと

  • 「繰り返しの遊びで安心していること」
  • 「無理に変えず、本人のペースを見守ってほしいこと」
  • 「新しいことを提案するときは、少しずつ変化を取り入れてほしいこと」

先生との連携が取れると、家庭と園の対応に一貫性が生まれ、子どもも安心します。

第5章:遊びの「広がり」をどう見守るか

遊びの幅が広がるときは、突然やってきます。
「いつもと違うことをしてみた」「人の真似をした」——そんな瞬間が、成長のサインです。

大切なのは、「広がりを促すこと」よりも、「広がる瞬間を見逃さないこと」。
そのときに「気づいたね」「やってみたね」と言葉で認めることで、子どもの自信になります。

声かけ例

  • 「今日はちょっと違うことしてみたね!」
  • 「新しいやり方、すごくいいね!」

第6章:相談を検討するサイン

多くの“繰り返し遊び”は自然な発達過程ですが、次のような場合は専門機関への相談をおすすめします。

  • 興味が非常に限られていて他のことにほとんど反応しない
  • 同じ動作を長時間続け、止めるのが極端に難しい
  • 言葉や社会的なやりとりがほとんど見られない

発達相談センターや療育センターでは、
感覚特性や発達のバランスを評価し、遊びの広げ方を一緒に考えてくれます。

最後に:“繰り返し”の中に育っている力を信じて

「同じ遊びばかりしている」と感じても、それは“安心”と“集中”の証拠です。
その遊びを通して、子どもは世界の法則を理解し、自分なりのペースで成長しています。

  • 今の遊びをまず認める
  • 子どもの興味の中身を観察する
  • 小さな変化を少しずつ入れる
  • 発見の瞬間を共有する
  • 広がるタイミングを信じて待つ

遊びの幅は、押し広げるものではなく、安心の中で自然に広がっていくものです。
「好きな遊び」にじっくり取り組むその時間こそ、子どもが自分の世界を築くための大切なプロセスなのです。

療育コンサル 中山 のぞみ
D&I株式会社取締役兼療育センター長
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