“声をかけても返事がない”——無視してるんじゃなくて切り替えが難しい?」
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“声をかけても返事がない”——無視してるんじゃなくて切り替えが難しい?」

2025年8月28日 更新:2026年5月18日

第1章 “返事をしない子ども”に困ったとき

日常の中で「無視された?」と感じる瞬間
→どれだけ声をかけても…という不安
「ねぇ、何回言ったら分かるの?」という声の背景
→保護者のイライラと、子どもの世界のギャップ

子育てをしていると、こんな場面に出くわすことはないでしょうか。

  • 「○○くん、ごはんだよ」と呼んでも返事がない
  • 目の前で声をかけたのに、まったく反応がない
  • 名前を何度も呼んで、やっと「え?」と返ってくる

こうした「返事がない」状態が続くと、保護者としては不安やいら立ちを覚えるものです。
「私の声、聞こえてる?」「無視してるの?」と不安に感じ、「なんで返事しないの!」と強く言ってしまうこともあるでしょう。

でも実は、こうした「反応のなさ」の裏には、“わざと”ではない理由があることがとても多いのです。


第2章 “返事がない”のは、本当に無視?

1、実はさまざまな発達特性や認知の違いが関係
(1)聴覚の問題から感覚処理、認知の切り替えまで
a、主な4つの要因
(a)「怠け」や「性格」ではない可能性

返事がない・反応がないとき、背景にある可能性には以下のようなものがあります。

  • 聴覚の問題(難聴、耳の病気、聴覚過敏など)
  • 聴覚情報処理障害(APD):聞こえていても、脳でうまく処理できない
  • 発達特性(ADHD、自閉スペクトラム症など)に起因する注意のコントロール困難
  • 選択的注意や注意の切り替えが難しい:何かに集中すると、他のことが“聞こえなくなる”

特にADHDの傾向がある子どもでは、目の前のことに没頭してしまい、声かけが“耳には届いているが脳に届いていない”状態が起こりやすいです。

これは「無視している」のではなく、「気づけていない」状態なのです。


第3章 子どもの注意の仕組みと「切り替え」のむずかしさ

1、「今に集中する力」は幼児期には未成熟
(1)選択的注意と持続的注意
a、左右に散る注意、ひとつに集まる注意
(a)声が届かない理由の多くは“今に集中しているから”

注意にはいくつかの種類があります。

  • 選択的注意:必要な情報を選んで集中する力
  • 持続的注意:ある対象に継続して注意を向ける力
  • 交代性注意:ある対象から別の対象へ注意を移す力

たとえば、遊びに集中しているときに声をかけても「聞こえない」ように見えるのは、持続的注意が強く働いていて、交代性注意が弱いからです。

また、感覚過敏・感覚鈍麻がある子は、「雑音と声の区別」が難しくなることもあります。これを「カクテルパーティー効果の困難」ともいいます。


第4章 家庭でできる“返事までの架け橋”5つの工夫

1、まずは「届く声かけ」の工夫から
(1)視覚と触覚のサポートを加える
a、名前+内容の簡潔な呼びかけ
(a)環境調整とスモールステップでの反応を引き出す

(1)視線を合わせてから声をかける

物に集中しているときには、名前を呼ぶだけでは反応がありません。
目線を合わせる・肩を軽くトントンと叩くなど、まずは「注意を切り替える合図」が必要です。

(2)環境を静かにしてから呼ぶ

テレビや雑音、騒がしい環境では、声が届きにくくなります。
できるだけ静かな空間で、明確な声かけを心がけましょう。

(3)“名前+内容”の短い声かけ

「○○くん、こっち見て」「○○ちゃん、ごはんだよ」のように、指示を短く・具体的にすることで、処理しやすくなります。

(4)反応の“形”を広げてみる

返事が「うん」や「はい」ではなくても、うなずく、目を向ける、体が動くなど、反応のバリエーションを認めましょう。

(5)繰り返しの中で習慣化を育てる

毎日の声かけ→反応の流れを、繰り返す中で自然なやりとりにしていくことが大切です。


第5章 “応答しない”のではなく、“応答できない”こともある

1、強い不安・PDA傾向・こだわりが強い子のケース
(1)「返事をしない」のは抵抗ではなく防衛
a、命令に聞こえると反発が出るタイプも
(a)信頼関係を育ててから、柔らかな声かけを

近年注目されている「PDA(病的な要求回避)」の傾向がある子どもでは、
“~して”という言葉に強いストレスや拒否感を示すことがあります。

そのような子どもに「返事して!」と強く求めると、かえって反発やパニックになることも。

このような場合は、

  • 命令形を避けて「〇〇したい人~?」と選択形式にする
  • 「~しようか」「~できたら嬉しいな」など柔らかい言葉を使う
    といった工夫が効果的です。

第6章 相談が必要なサインとは?

1、どんなときに受診や相談が必要か?
(1)気になるサインの見極めポイント
a、チェックリスト的な観点
(a)小児科・療育センター・発達外来への相談も視野に

以下のような場合には、一度専門家に相談することをおすすめします。

  • 家族全員が何度声をかけても、反応が極端に乏しい
  • 言葉の理解ややりとり全般に難しさがある
  • 他の感覚(触覚、視覚、聴覚)でも偏りが見られる
  • 発語はあるが、コミュニケーションとして機能しづらい
  • 集団行動や日常生活で大きな困りごとがある

受診先としては、以下のような機関があります。

  • 耳鼻科(聴力、APDなどの検査)
  • 小児科(発達全般の初期相談)
  • 発達外来(発達障害の評価と対応)

最後に:返事がないのは「届いていない」のではなく、「届きにくいだけ」

子どもが声かけに反応しないと、親としてはつい不安になったり、「無視されている」と感じたりしてしまいます。
でも多くの場合、それは“意思”ではなく“仕組み”の問題です。

  • 注意が逸れている
  • 切り替えに時間がかかる
  • 声が届きにくい状況にある
  • 応答の方法がわからない
  • 不安やストレスを感じている

こうしたことを理解しながら、
「返事をする」ための準備を整える関わりが、親子のやりとりをより深いものにしてくれます。

今日からは、少しだけ声かけのタイミングや方法を変えて、
「ちゃんと届く声」に近づいてみませんか?

療育コンサル 中山 のぞみ
D&I株式会社取締役兼療育センター長
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