私が「療育コンサル」と名乗る理由
自分の仕事を、ひと言で説明しようとすると、少し考えます。
子どもへの支援を考える。保護者と話す。スタッフの育成に関わる。事業所の運営を見直す。そして、業務を支えるシステムにも関わる。
私はD&I株式会社の取締役・療育センター長として、日々の療育や、自社の事業所運営に携わっています。
それに加えて、フランチャイズ加盟事業所への支援、コンサルティングを行っている事業所の運営サポート、自社システム「EcoldLINK」の保守・運用にも関わっています。
目の前のお子さんへの支援を考える日もあれば、ほかの事業所の課題を一緒に整理する日もある。現場で使うシステムが、安心して使い続けられるように対応することもあります。
こうして並べると、ずいぶん違う仕事をしているように見えるかもしれません。
でも、私の中ではつながっています。
「その子に必要な支援を考え、それが実際に届き、続いていくところまで考えたい」
この仕事を伝える言葉として、私は「療育コンサル」と名乗っています。
今回は、その肩書きに込めている思いについて書いてみたいと思います。
「どんな療育がいいか」だけでは、終われない
子どもに合った支援を考える時、私は、最初から教材やプログラムを決めるのではなく、その子の得意なこと、苦手なこと、感覚の感じ方、行動の背景などを確認することを大切にしています。
ただ、支援の方向性が見えても、それだけで私の仕事が終わるとは思っていません。
例えば、職員の間で「この子には、活動の前に予定を伝えよう」と決めたとします。
その時、私が確認したいのは、「予定を伝えるとよいですね」というところまでではありません。
何を使って伝えるのか。どのタイミングで、誰が伝えるのか。担当者が変わった時も分かるようになっているか。本人の反応は、どこで共有するのか。
そこまで具体的に考えたいのです。
よい支援方法を提案することと、その支援を日々の現場で実践できるようにすること。その間も、私が関わりたい仕事です。
子どものことを考えていたら、組織の話になりました
「子どもへの関わり方の話をしているのに、なぜ職員教育や情報共有の話になるの?」
そう思われるかもしれません。
私にとっては、その二つを分けて考える方が難しいのです。
例えば、一人の職員が、その子に合う関わり方を見つけたとします。
その気づきは、とても大切です。でも、その人しか知らないままでは、ほかの職員が同じように関わろうとしても、何をすればよいか分かりません。
だから、どんな場面で、どう関わったら、どのような反応があったのかを共有したい。
個別支援計画に書いた目標も、書類の中だけに置いておくのではなく、今日の遊びや生活で何をするのかまでつなげたい。
私が考えたいのは、「この人がいるから、よい支援ができる」だけではなく、「チームで考え、支援を続けられる」状態です。
子どもへの支援を大切にしたいからこそ、その子を支える人たちが、どう働き、どう学び、どう相談できるかにも関わっていたいと思っています。
「もっと頑張って」だけでは、変えられないことがある
私自身、人材育成で、最初からうまくできていたわけではありません。
以前は、説明すれば伝わり、理解すれば次から実践できるものだと考えていました。でも、そう単純にはいかず、自分の伝え方や、職員が動きやすい環境をつくれているかを考えるようになりました。
だから、現場でうまくいっていないことがあった時に、「意識を高めましょう」「もっと丁寧に関わりましょう」と言って終わりにはしたくありません。
何を優先すればよいかが、共有されているだろうか。
必要な情報を、すぐに確認できるだろうか。
迷った時に相談できる人や時間が、用意されているだろうか。
もちろん、一人ひとりが学び、自分の仕事に責任を持つことは大切です。同時に、運営する側にも整えるべきことがあると思っています。
子どもにだけ努力を求めない。それと同じように、支援する人の努力だけにも頼り切らない。
私自身も、その視点で自分たちの現場を見直し続けたいのです。
システムづくりも、私にとっては療育につながる仕事です
D&I株式会社では、療育施設向けシステム「EcoldLINK」の開発や運用支援にも取り組んでいます。記録や情報共有、支援の内容を確認できる仕組みを整えることも、現場の支援とつながる仕事として考えています。
「療育コンサルなのに、システムのこともするんですか?」
そんな疑問があったとしても、不思議ではありません。
でも、私がシステムで考えたいことも、出発点は同じです。
子どもの様子を共有したい時に、必要な情報が見つからない。記録は残しているけれど、次の支援を考える時に使われていない。
そうした状態があるなら、スタッフに「もっと確認してください」と求めるだけでなく、確認しやすい形を考えたい。
もちろん、システムを導入するだけで、すべてが解決するとは思っていません。入力すること自体が目的になっていないか、現場で無理なく使えるかも、確かめていく必要があります。
私が目指したいのは、業務をただ速く終わらせることではありません。
子どもを理解することや、保護者と話すことに、きちんと時間を使えるようにすること。
そのための仕組みづくりも、私にとっては療育の仕事の一部です。
「何でも分かる人」として、名乗っているわけではありません
ここは、誤解なくお伝えしておきたいところです。
「療育コンサル」と名乗っているからといって、私一人ですべての専門領域を担えると考えているわけではありません。
医療的な判断や専門的な評価を、私の見立てで置き換えるつもりもありません。
必要なことは、それぞれの専門職に確認する。ご家族が知っている普段の姿を聞く。現場の職員が気づいたことも持ち寄る。
そのうえで、「では、日々の支援では何を大切にするのか」「誰が、どのように関わるのか」を具体的にしていきたいと思っています。
私が担いたいのは、専門職の知見と、子どもの暮らしと、現場の実践をつなぐ役割です。
だからこそ、分からないことを分かったふりで埋めないことも、大切にしたい。
何を確認する必要があるのか。誰に相談すればよいのか。どこまで分かっていて、何がまだ分からないのか。
そこを整理することも、相談を受ける側の仕事だと思っています。
目の前の課題だけでなく、その先の暮らしを考えたい
私が発信の中で大切にしてきたのが、子どもたちの10年後を見据えるという視点です。今日の支援を、将来の暮らしや社会とのつながりの中で考えたいと思っています。
ただし、未来のために、今日を我慢させ続けたいわけではありません。
自分の気持ちを伝えられた。
困った時に、誰かを頼れた。
自分に合った方法で、やってみることができた。
そんな経験を大切にしたいのです。
支援を考える時も、「この行動を変えられるか」だけでなく、「この子の毎日が、どう過ごしやすくなるのか」を忘れずにいたい。
事業所の運営を考える時も、「今日の業務が終わるか」だけでなく、「この支援を、これからも続けられるか」を考えたい。
目の前の困りごとと、その先の暮らし。その両方を見る仕事をしていきたいと思っています。
「療育コンサル」は、私が引き受けたい仕事の名前です
私にとって、この肩書きは、何かを知っていると示すためだけのものではありません。
子どもの様子を見て、必要な支援を考える。
その支援を、ご家族や職員、専門職と一緒に具体的にする。
実践してみて、合わなければ見直す。そして、無理なく続けられる環境や仕組みも考える。
そこまでを、切り離さずに関わっていきたい。
療育の方法を伝える人であると同時に、その療育が届く現場を一緒につくる人でありたい。
それが、私が「療育コンサル」と名乗る理由です。
この専門家ブログでも、「こうすればよい」という方法だけでなく、何を見て、どう考え、どこを見直すのかをお伝えしていきたいと思っています。
お子さんへの関わりでも、スタッフ育成でも、事業所の運営でも、「何から整理すればいいのか分からない」ということがあれば、その状態のままお聞かせください。
困りごとを一つの立場だけで捉えず、今できる一歩を、一緒に考えていきましょう。
